誓いの言葉

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 ふと意識が浮上すると、誰かが私の頭を撫でている。温かい、大きな手が優しく、私の頭を撫でているのは心地がいい。それに甘えて、私は微笑んでいた。  けれどふと、誰が? という気持ちになる。  ここには私と紅泉以外では、李燕と黒耀くらいしか日中にこない。  黒耀は主に紅泉の容態を診るために、李燕はここで居眠りをする私を起こしに。どちらも頭など撫でず、すぐに起こしてくれるのに。  気づいて、私は弾かれたように頭を上げた。そしてそこに、穏やかで優しい赤い瞳が見つめているのを見て、頬を涙が流れた。 「春華」  柔らかな声が名を呼んでくれる。私はたまらず、紅泉に抱きついて泣いた。手が背中を撫で、頭を撫でてくれる。嬉しくて、たまらなかった。 「春華?」 「ずっと眠ってたのよ、紅泉。もう、目が覚めないんじゃないかって、不安で…」  素直な弱気を口にすると、背中に回った手が引き寄せるように少し強くなる。胸元に顔を当てているから、紅泉の心臓の音がしっかりと伝わった。 「不安にさせたか」 「…でも、もう大丈夫」     
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