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ちゃんと目が覚めた。前と変わらない紅泉だって、確かめられた。だからもう、眠れない夜なんて来ない。今日からはきっと眠れるし、食べられる。そう確信できた。
私が落ち着いたのを見計らって、紅泉が抱き寄せる力を緩めてくれる。私も頬やら目やらをゴシゴシ拭って、改めて笑った。
「どこか、具合の悪い所はない?」
「あぁ、ないが。そもそも、何故私は生きている?」
とても疑問そうに手をにぎにぎしたり、首を回しながら紅泉は尋ねる。まぁ、ごもっともな質問だろうな。
「私にもちゃんと説明はできないんだけど、龍玉のおかげらしい」
「龍玉?」
何から説明したらいいのか。ってか、私には起こった事しか話せないけれど。
そんな事を考えていると、不意に扉がノックされる。そして、仕事から戻ってきたらしい黒耀が、本当に気の抜けた顔で入ってきた。
そして、起きている紅泉と目があって現在フリーズ中。
「どうした、黒耀」
「のわ! 幻とか、僕疲れすぎてるかもとかじゃないのか!」
「相変わらずとち狂った事を言う」
「お前も相変わらず可愛げないのな」
一歩引くくらい驚いた黒耀だったけれど、そんな軽口を言っているうちに落ち着いたらしい。入ってきて、紅泉の傍に椅子を引き寄せた。
「黒耀、私に何が起こった? 私は、本当なら生きていないはずだ。春華は龍玉のおかげだと言っていたが」
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