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「あぁ、そんな感じ。ってか、龍玉が何か分からないから、確かな事は言えないけれどね。とりあえず、脈診るよ」
紅泉の手首を取って脈を診て、ついでに気を流して体に異常がないかを確かめた黒耀は、何事もないように数分でそれを終えた。
「脈拍も血流も龍脈も異常なし。体に不具合は?」
「ない」
「そりゃ上出来。さて、説明か」
少し難しそうな顔をしながら、黒耀は整理して話し始めた。
「春華ちゃんの話と現実に起こった事での仮定でしかないから、詳しい説明とかは求めるなよ」
「あぁ」
「まず、僕達はあの夜貴族街の外れのお堂で大きな音がして、それに驚いてとりあえず駆けつけた。途中で藍善とも会って、二人でな。んで、お堂に着いたら屋根は落ちてるし、建物も滅茶苦茶な状態だった。そして、そのお堂の目の前で春華ちゃんとお前を見つけたわけだ」
その時のことを思い出すと、まだ背筋が寒くなる。あの夜はとにかく、あれこれありすぎて記憶が混乱するのに、抱いた感情は物凄くリアルに思い出せるのだ。
「春華ちゃんの傍で伸びてるお前を診察して、とりあえずどうして生きてるのか疑問に思って春華ちゃんに聞いたらさ、龍玉がお前に移ったって話になって」
「龍玉が私に移った?」
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