180人が本棚に入れています
本棚に追加
ニッと挑戦的な笑みを浮かべる紅泉を見上げて、急に心臓が煩く騒ぎ始める。この感覚は久しぶりで、違う意味で胸が締まる感じがした。
「ありゃ、藪蛇? じゃ、お邪魔は退散するかな」
そう言って、黒耀は頭をかきつつ部屋を出て行く。
私は紅泉の腕の中で、ドキドキが止まらないままじっとしている。物凄く落ち着かなくて、それでも何か言わなければと思ってしまって、ぎこちない笑みを浮かべてしまう。
「心配をかけたな、春華」
「あぁ、ううん」
「痩せたか?」
「そうかな?」
私の頬に触れて、肩に触れて、紅泉が心配そうな顔で言う。桜嘉ちゃん達に指摘された通りだろうか。私自身はそんなに気にしていなかったんだけれど。
「大丈夫、今日はなんだか沢山食べれそう。紅泉も一緒に食べよう」
「あぁ、そうだな。言われると腹が減ったような気がする」
穏やかに笑うその傍で、私は明るい声で言う。緊張を隠しているのは、バレバレかな?
「じゃあ、早速…」
「春華」
この心臓に悪いドキドキをとにかく静めるには、とにかく距離を置く事だ。そう思っていたけれど、紅泉は離してくれない。それどころかとても真剣な眼差しで私を見てくる。こんな顔をされると、どうしていいか分からない。
「春華、誓った言葉を覚えているか?」
最初のコメントを投稿しよう!