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「いつまでも待つ。そう思っていたのは、本当だ。だが、時が迫るというならば、言わずにいられるものか」
言わなければいけない。自然と力は入ってしまう。逃がしたくないと思う気持ちが、私の余裕を全て奪い去っていく。
「春華、きっと定めはまだ変わっていない。紅玉が砕けたのは、油断するなという警告だろう」
「あ…」
「だが、もしもその定めを越える事が出来た時には」
不安に怯える春華を抱きしめ、私は誓う。この身も、心も、時もすべてを委ねると決めた。そして同じことを、求めようと。
「もしもその時には、お前を迎え入れる。受けてくれ、春華。私はお前を離す気などない。もう、我慢もしない。拒まれようとも、何度でも言おう。お前が受けてくれるまで、何度でも」
果たして受けてくれるのか。時がこんなに長く感じたことはない。
春華の表情からは読み取れない。最初の頃、結婚など考えられないと言っていた。あの時の気持ちが少しは変わってくれているか、私は量りかねている。
それでも緩く私を見る目は、しっかりとした意志を感じさせた。それでようやく、私は安堵した。
「何度も言わなくても、大丈夫。紅泉がいいって言ってくれるなら、いつでも私は紅泉のお嫁さんになる」
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