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褒められるのは、やっぱり慣れていない。くすぐったくて、ソワソワする。
「今日は一区切りついたんだ、このくらいにしておけ」
「でも、まだお昼までは時間があるよ」
時計を見るとお昼までは後一時間くらい。
私はここから一人では出ない事になっているし、離宮に帰るのもちょっと寂しい。何より仕事モードになっているから、もう少しやっていたいんだけれど。
「では、私の仕事が終わるまで様子を見ているか?」
「え?」
それって…仕事をしている紅泉が見られるって事?
ちょっとだけ、興味があった。
厳しいって言ってたから、怒鳴り声とか聞こえるのかと思ったけれど、ずっと静かなままだった。どんな風に仕事をしているのかなんて、想像できない。
私はおずおずと頷いて、紅泉の仕事部屋へとついていった。
中は静かだが、物凄い緊張感があった。
皆文机に座って何かを見ながらせっせと手を動かし、ソロバンを弾いている。
紅泉は少し高い所にある文机に座り、同じように忙しく何かを書いている。
「紅泉様、工部からの依頼について予算の精査をお願いします」
「そこへ」
「紅泉様、吏部へ要請した人事ですが、やはり難しいとの事です。次の科挙まで待つようにと」
「分かった」
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