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酒宴
その夜、私は綺麗に着飾って紅泉と一緒に車に乗った。この日は紅泉も仕事を休んだらしく、夜には顔色も戻っていた。
「ねぇ、派手じゃない?」
牛車の中で私は聞いた。
私が今着ているのは、胸元が開いた大胆にも思える真紅の着物だった。髪も綺麗に結われ、そこに赤い簪を差している。
こんな派手な色合いと形の服は花街以来だったから、凄く緊張する。
「それほど肌は見えてはいない、心配するな」
「本当? 色もこんなに派手だけど」
「確かに、珍しい気持ちだが似合っている。淡い色もいいが、たまにはこうした色もいい」
少し鋭い笑みを浮かべた紅泉が、胸元で揺れる紅玉に触れる。鎖骨の辺りで、紅玉は揺れていた。
「これ、凄いんだね。紫廉や黒耀も驚いてた」
「当然だ。これは、私の魂を移してもいる。これが砕ける時は、私が死ぬ時だ。その位、これは半端な気持ちでは贈らぬ物だ」
その言葉に、私はドキッとした。そして、胸元の赤い石をギュッと握った。
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