繋いだ未来

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繋いだ未来

 激しい頭痛に目が覚めると、私は床に寝転んでいた。  周囲はよくわからないけれど、微かにお堂の入口らしいものが見える。  手に、ヌルリとした感触があった。それは温かい。  視界が暗くてよくわからなくて、私はその手を近づけた。手にはべったりと、赤い物がついていた。 「!」 「目が覚めたか…」  微かな声に上を見る。紅泉の顔が、本当に近くにある。その表情は苦痛に歪んでいて、微かに脂汗をにじませていた。 「紅泉…」 「いいか、春華。よく聞け。ここから抜け出して、入口まで行け。お前は小柄だし、まだ完全に崩れたわけではない。そうしたら、藍善と黒耀を」 「ダメ!」  同じことを言っている。私はそれを否定した。  紅泉は困った顔をして、私を見ている。けれどこれだけは、頷ける話ではなかった。 「紅泉も一緒に」 「動けない。少しでも動けば、崩れる」  目が闇に慣れてきた。私は目の前の光景をようやく、正しく認識できた。  紅泉は落ちてきた柱や梁をその背に受けて、私を庇っていた。折れた木が、腹部を貫いている。それだけじゃない。鉄の装飾が、背中から刺さっていた。 「!」     
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