誓いの言葉

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誓いの言葉

 その後は、とにかく大騒動だった。  私たちがいたあのお堂を藍善が調べたら、床下から沢山の書面や帳面が出てきた。  それは、紅凱が国のお金を横領していた裏帳簿と、その紅凱にあれこれと賄賂を貰っていた人たちの記録と、署名済みの証明書だった。更には紅凱本人がつけていた賄賂の詳細な記録も出てきた。  「おそらく」という仮定つきで藍善が話してくれた話では、あのお堂は紅凱が人に言えない密会をする場所で、書面や帳簿は何かあった時に自分の身を守る為の保険だった。そして自分が死んだ時にはお堂を壊す事で、これらの証拠を隠滅するつもりだったのではないか。  ただ、今回は運よくそれらが残っていた。そしてこれを証拠に、宮中の貴族派の人間が大量に捕まったのだ。  人事を司る吏部尚書の黒累さんが、忙しさと人員不足にとち狂っていると話を聞いた。ご愁傷様だ。  ただ、本当にとにかく人がいなくて大変だった。  まず龍王代理の緑潤が真っ先に失脚したことで、紫廉が代理の代理を務めるという、なんともおかしな状態になった。ただ、あの人もとにかく優秀だった。今は宰相の藍法さんと二人で国の混乱を納めている。  他にも穴は開きまくりだったけれど、官吏経験のある黒耀が期間限定で復活したのと、黒秦さんと白夏さんがあちこちの仕事を代理でやっているおかげでどうにか回っている。  何より大変だったのは、戸部だった。  紅凱が死に、紅凱の部下も殆どが不正に関与したことで捕まり、紅泉までが未だ目覚めない状態で、全てが黒翠さんに降りかかってしまった。  元々細身の彼が日に日にやつれていくのは、見ていて気の毒な事だった。
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