初給料

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初給料

 資料整理を始めて一カ月が経った。  私はすっかりあの部屋の主になった。  棚には棚番をつけ、竹簡には表書きがついた。手間ではあったけれど、やり始めると結構楽しくて進んでいく。  日々整理される部屋の中を、黒翠さんや紅泉、それに紅泉の部下の人達も目を丸くして見ていた。  そうして本日ようやく、私は出費に関する資料の整理を終えた。 「終わった!」  思わず拳を突き上げて、そのまま床にゴロン。背中も痛ければ腕も痛いが、全部が一つやり遂げた達成感でどうでもよくなってくる。  私の声を聞きつけたのか、紅泉が訝しげに入ってきて、だらしなく床に倒れた私を見て怒った顔をした。 「春華」 「だって、やっと一つ終わったんだもん。腰もなんも痛くてさ」  ニコニコしながら言った私は床の上に胡坐をかいて座る。ズボンだからまったく問題ない。  紅泉は近づいてきて、棚の中に整然と納められた竹簡を見る。その一つを手に取り、表書きを確かめ、中を確かめていく。  そして、とても柔らかい笑みで見下ろした。 「よくやった、春華。お前はとても優秀だ」 「勿論よ」  ぶっきら棒に言った私は、自然と頬が熱くなっていくのを感じた。     
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