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正午。夕方でもないのに赤黒く染まった空は、俺達の視界まで紅く染め上げていた。
俺は元来、青空の下で読書をすることが好きで、よく近所の公園のベンチに腰掛けて、夏目漱石や梶井基次郎を読んでいた。そんなお楽しみが終わったのは、青空が二度と見れなくなってしまった、数週間前のことだった。
これは、生きる楽しみを一つ失ったことを意味する。
俺はテレビを点けようとして、途中で伸ばした手を引っ込めた。電源を点けた後に映るものを予想できたからだ。伸ばした手は虚空を掴み、虚しさが残る。
巨大な隕石。
月の体積の十倍はあるそれは、今にも落ちてきそうなほど近くまで来ていた。
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