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5
ふっと、左手にぬくもりを感じた。
私の指と指の間に、誰かの指が入り込んできて、私の手をそっと優しく握った。
それは、余りにも優しい魔法であった。
「ぐはっ…!」
気が付くと眼前は暗くなっていた。いや、人影だ。目の前に人が立っていたのだ。遠くには丸焼きにしたはずの男が、地面にうずくまっていた。
「何で―」
そう呟いた瞬間、目の前の人影がこちらを向いた。
ミルクベージュの長い前髪が揺れる。どこまでも深い紫の双眼が、エーデを捉えた。
「お前…」
「…」
「拒否しないのは同意の合図と同じだと思う」
「は?」
こいつは、一体何を――と、一瞬考え、はっと思い当たった時には、恥ずかしさで顔が熱くなっていた。
「ばっ、違っ、睡眠誘発剤で意識とびっ、飛びそうだったん、だっ!!!」
「はぁ?なに焦ってんだよ。冗談だろ」
端正な顔がからかうような顔をしながら、こちらを覗き込む。か、顔が近い――耐え切れず顔をそらす。目の前の男子生徒―この大学の制服のマントを着けているから多分そうなのだろう―は、怪訝そうな顔を一瞬してから、先程勢いよく蹴飛ばした背後の男に目をやった。
「おい、大丈夫か」
「え?私?」
「お前に声掛けてないだろ、向こうだよ向こう」
カチン。何なんだこいつは。ピンチを助けてもらったとはいえ、腹が立つ。
「う…っ、がはっ…」
「大丈夫そうじゃねぇから大丈夫だな。おい!」
ミルクベージュ前下がりワンレンの男はマントを翻し、地面でうずくまる金髪の男に近寄る。
「よく聞け。もうこっちに危害を加えないと言うのであれば、お前の事を見逃してやる。まだやるっていうんなら、そうだな、瀕死の状態にまで追い込んでから外に出させてやる」
う、うわぁ。もしかしてこいつケンカしてるヤンキーなんじゃ。いや、もしかしてじゃない、そうだ、絶対そうに違いない。
「…ん?っていうかあんた、外に出る方法知ってるの!?」
「あぁ?知らねーよ。第一、この建物自体に制御の魔法がかかってて、モノ一つビクともしねーだろーが」
「ししし、知ってます!俺、解除できます!」
突然足元から怯えた声がしたので、目をやると、金髪の男が青く光る宝石を持っていた。
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