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「何それ」
「こ、これを使えばここの魔法が解けると、依頼主に渡されっ」
「ほーう、依頼主が自ら解除魔法を仕込んだアイテムを作ってくれたって訳だ」
金髪の男の手から、ひょいと宝石を男子生徒が拾い上げる。窓から差す陽にさらすと、きらめきが一層増した。男子生徒は、そのまま宝石を勢いよく窓へと投げつけた。
バリンッ!
「解除された…!」
「おっけーおっけー、これで外に出られるって訳だ。ありがとなー、マフィアの下っ端っぽいお兄さん」
「ひっ、ひいっ」
「ん?」
ガグンッ、と世界が揺らぐ。気が付くと、私は地面へと身を横たえていた。
「あ…れ…」
男子生徒が駆け寄ってきて目の前にひざまずいていた。
「ちょっ、おい、大丈夫かよ」
「…」
「おい!」
「…眠い」
「は…あぁっ!お前睡眠誘発剤吸わされてたんだったな!」
「…お願い」
「は、何が?」
「やばい」
「だから何が!」
「今何時」
「え、うんっと、13時25分」
「やばい!!!」
「うるせぇ!おめーぜってー元気だろ!」
「お願い、走って…」
「はぁ?」
「これ資料…あとは任せたから…ごめ、もう限界…私、これ…成功…させな……すぅ」
「ちょ、は?おい!何なんだよ!…えっと、なになに?”ステージA 楽器演奏 13時30分~ 進行表 舞監用”…?…はぁ!?ちょっ、お前起きろ!おい!どういうことだよ、おーーーい!!!」
色とりどりの花びらが舞う晴天の中を、緑の髪の女生徒を担いで男が駆ける。
それは、交じわるべくして交わった、二人の魔法学生の出会いであった―――
『エーデルワイス・イヴェントゥ』第一話 異文化、邂逅。
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