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一歩足を踏み出した瞬間、咄嗟に口をガーゼで覆われ、強い力で後ろに引かれた。甘い香りがする。エーデは咄嗟に左手に意識を集中し、一次魔法をそこに発動させた。背後の人物とエーデの間につむじ風が発生し、勢いよく二人を反対方向へ弾き飛ばす。背後にいた人物は質量をもって地面へ叩きつけられた。 「いっ…!」 「誰ッ…!?」 見るとそこには、地面に寝転がる男の姿があった。25歳くらいだろうか。金の短髪に狐目のその容姿に、見覚えは無かった。 じりっと片足を引いて警戒の体勢を取る。 「いったいな~、ひどいじゃないの。俺はね、今日お嬢ちゃんと遊ぶことを頼まれただけなんだよ?」 「はぁ!?なにそれ!誰によ!」 男を睨む目がキツくなる。更に腰を入れて構えた。 「んー、残念ながら、それは言うと怒られちゃうから言えないかも!」 「何それ…遊ぶって何?人を背後から襲って、その態度はどういうことなの」 金髪の男は身体に付いた砂埃を払い落としながら立ち上がった。顔はケロリとしている。 先程吹き飛ばされた事は何でもないように男はエーデに近寄って来た。近づいてくるにつれ、エーデも後ずさり、距離を取り続けた。 「どうもこうもなにも、可愛いおねーちゃんくるから、「何してもいいよぉ~」って。」 「何その裏声、なるほど、依頼主は女ね…私に恨みでもある人かしら、どうにも身に覚えがないわね…」 「だーから、そんな裏事情は知らないんだって」 男の物言いにイラッとした瞬間、後ずさる踵に硬い感触があった。壁だ。いつの間にか自分は壁際まで追い詰められていたのだ。右にも左にも逃げ道は無い。ここは正当防衛を掲げて軽い攻撃を食らわせるしかない。 そう思った時だった。突然世界が回転した。ふわっ。 「おっと」 次の瞬間には、目の前の男に片手で腰を抱えられていた。ぼーっとする。一体突然何が――
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