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西の空に鯨が見えます。鯨は雲を煩しげによけて、東の街を目指します。東の街の人々は震えました。大質量の爆弾のようなものが迫ってくる恐怖に震えました。腰は抜けて、歯も口から逃げ出さんばかりに震えています
負け犬の遠吠えが、水槽の外から聞こえてくる。水面が波打ち、浮力を失った花びらが呑み込まれた。もがくこともできず、遠吠えもできず。ただ吐き出したあぶくが空で弾けて、揺れる様を見ていた。ーーぷちってんてんてん…
あの子のへの字口をどうにかしたくって、道化を気取ってみせたんだ。不器用な僕にはジャグリングや玉のりはできないから、ずいぶんと無茶をしたと思う。消えない傷にあの子はへの字口を解いたけど、ああ、やんなきゃよかったと
包み隠さず教えて欲しい、君の名前の数々を。そしてその意味を。清流も濁流も、何かを運んでいる。
それは川底を転がる小石、やがて黄金の砂浜となる小石であったり、脚色の仕様のない悲劇であったりする。いずれも定まらぬ運命だ
あの雲よりも、霜の降りたミントよりも白いチョコレートを。氷のような冷たい手で割って、暖かい土が見えつつある原っぱにまく。
溺れるアリよ、希望を胸に懐く人々よ、あなたたちは重なって見える。甘える鼓動に耳を貸せ
手紙を送ろう、お天道様に。白紙をくしゃりとボトルに詰めて、月面を思わせるコルクで栓をする。
無骨すぎるかとリボンを巻いたら、手製のロケットにくっつけて。太陽に白く塗りつぶされてしまわない星があの空に生まれたら、なんて
雨の日には二本、傘を持って。知っているだけの路地を歩く。そこで僕は誰かを探している。きっと道よりも縁遠い誰かを。手提げ鞄を傘に走り去る人を見送り、丸い背中の君に差し出す。その瞳はアーモンド、ずぶ濡れの僕を映してる
消えかけた白線の上を僕は、超特急列車追いかけながら。どこかで途切れるなんて、考えすらしない。
後先のことなんて踏み潰して架け橋にすればいい。前進せよと街の喧騒のコラージュが、前進せよとひゅうひゅう喉がいう。
夢のような出来事が起きてしまえば、きっと僕らは夢の中に囚われてしまうから。
現実主義者の神サマは、貢物のライフルで、それをブチ抜いているんだよ。
柔らかな月光、トゲトゲしい羊雲、ふわあ、とあくびが止まらない
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