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ああ、寒い。こんな日には火に当たりたくなる。
その火が自分に燃え移らないかとひやひやしながら。粉状のルビーが数メートル先の闇に呑まれていくのを見ながら。肌を焼く甘い痛みにひとり酔う。湿り気を帯びた薪と空のボトル
氷砂糖を日にかざし、あの眩しい星を見てみたい。
それが体温や熱風の舌で溶けきるまでの間だったとしても。あの星はどんな顔をしているのだろう。
その爆発的なエネルギーが生命を育んでいるとも知らないで暴君でも気取っているのか
渇いた大地に塩をまき、この三千世界の水を招け。状態変化のものさしに、なるぐらいには身近な隣人。捉えきれない世界のうねり、勇み飛び込み穢れを剥がす。私たちは蹴りとばされた馬鈴薯で、食われる覚悟を持たぬ毒ナイフ
回転木馬にまたがって、電池切れ間近のオルゴール、奏でたような断続音律、不思議と胸が躍るだろう。整髪料で固められ、手ぐしすら通さぬお御髪は、燃えるようでいて凍てついていた。疾く疾くと鞭打てど鞭打てど、君には追いつけじ
降ったり止んだり、忙しい奴だな、なんて。まるでうんざりしているような口ぶりで。水玉模様の傘をステッキがわりに、空の色に似たブロック塀の上。先客に頭を下げてから、飛び移ってゆく。僕を写す水鏡、浮かびはしないアメンボよ
腕いっぱいの青檸檬。星型のヘタを指で弾けば。まるでお気に入りの帽子を被った少女のように、ぎゅっと音がするまで抑えてる。ああ、僕らを照らす夜空も、苦味の強い青檸檬であればと
塩の柱の御前に、傅け・差し出せ・その首を。トワへの期待か疼痛か。赤めく首に浮かぶ青。その紋様は絹の糸、吐き出す地虫の桑の葉の、枯れたレースによく似てて。今にも折れんばかりの細い指、書くは従属の認印
愚図りだした空。慌てて下る長い坂。置き去りにされた赤光は、ボクらの街を寂しく彩った。ビニール傘を買う金があっただろうか、なんて、狭いポケットの中、汗でじとついた指で探れば。いつ貰ったかもわからない一口キャンディが応えた。
ふと、腕を引かれた気がして、振り返ってみると誰もいない。それを繰り返す内にプツリ。糸が切れたような音がする。おかしいな、と。合成繊維で全身を固めた僕にゃ、切れるようなものなんて、と。はらはら、とめどないラピスラズリの涙
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