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牧歌的な娘、ろくに味もしないだろうに花をついばむ。蝶にでもなったつもりでいるのかそばかす面。お前なぞよくて蛾だ、と。娘から目を離せず、しかし合わせることもできない男は知らぬ。娘の醸す鱗粉には毒があることを。桔梗の口紅
喉元さらけ出して摩天楼。カカシに囲まれた荒畑。膝を抱えるぬかるみ。そこでもがくはヒキガエル。砕けた鱗を着た誰ぞに睨まれたわけでもあるまいに、上手く泳ぐことができないで。どっちつかずの両生類、息苦しくっていけないや
熱視線感じて、ボッと首が熱くなる。火傷でもしたかな、ヒリツクなぞった跡。目立つように残された昨夜の君の歯型。『肉食獣じゃないのが悔やまれる、だって一晩もすれば薄くなってしまうから。』だからって鈍い牙で、血を滲ませることないだろ。臆病者の学校コウモリが、肩で風を切れる闇夜でも。君の瞳の色は、想いは読み取れて。黒点。僕の太陽
くしゃくしゃに丸めたプリント、中指で弾いて。物欲しそうなシュレッダーの上、素通りさせる。水差しかやした黒猫の、僕のテリトリースタンプに、着地を決めて開いたら。インクの代わりに苦悩が滲む白いプリント
日輪をフックに、垂らされた暗幕。ぐずつく火の玉泣き疲れて眠ったあの日から。年季ものなだけに虫食いだらけ。星に願いをかけたなら
僕の名前を知ってるかい。ほら言い当ててよ。存在を人型に縛りつけて。アンティークドールがデカイ顔してる。おたく今年でいくつよ艶々しちゃって。老いを隠すため?血肉を捨てて。熱っぽいのは胡乱な目だけ。身動きがとれないからと膝元を固めて。身代わりマトリョシカ、砕ける様すら見ようとしない。いくら取り繕ったところで、搾取した勝利の美酒では、喉の渇きは癒せない。僕は枯れ木の陰
ちょうどよかった、飽き飽きしてたところだ。後世に名を残す人々を、早々に荷造り紐でまとめてしまった世界は。どうやら貧乏性のようで、無駄に場所をとる僕を散乱させている。気だるげな鼓動を聞いて、君は駆けつけてくれたんだろ
雪は音を吸うんだってさ。それを伴う冬は、足跡すら残さないで。少しずつ近づいてきているんだ。それから逃げるように、また追うように飛ぶ、名前も知らない鳥たちに憧れて。紅茶のような夕暮れ時の、濃い電線の影を渡る
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