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こんなに自分の身近にいる人が唐突に死ぬなんて今まで考えてもいなかった。でも、龍太が死んでも町の様子は全然変わっていなかった。街行く人も周りにある自然も生き物も。変わったのは龍太を取り巻く私や武、龍太の両親などのほんの一握りだけだ。そのほんの一握りの事が起こったからと言って世界が変わるわけでもない。そんなものは大海原に水を一雫落とすようなものだ。
非日常は日常の中にあるのだなと私は感じていた。
私の家に着くと何だか安心した。早く家に帰ってこられたからなのかご飯を今日も食べる事が出来るからなのか、はたまた、安全に今日も生きて帰る事が出来たからなのかは自分では良く分からない。が、今日は特に体育があったわけでも無し、むしろベットでぐっすりと寝ていたのにとても体が重く、鉄の重りを体中に付けているような感じがした。
私はヨロヨロと階段を上がり自分の部屋に着くとベットに向かって突進をした。横には小さい頃に誕生日に買って貰った、今の自分の身長の3分の2はあるであろうクマのぬいぐるみを抱きしめた。
私の心の息苦しさを埋めるかのように私は泣いていた。私の心には大きな穴がぽっかりと空いていて涙でその穴を塞いでいる感じがした。
私は暗闇の中を一生懸命走っていた。 でも、その暗闇はどこまで行ってもどこまで行ってもゴールが見えなかった。ある地点まで行くと龍太がいた。
「龍太!」
私は龍太を追いかけるが、なぜか龍太はどんどん離れて行ってしまう。
「やだ!龍太!行かないで!行かないで!行かないで!」
それは自分が何者かに引っ張られていくような感覚だった。龍太とつながっていた何かが少しずつ引きされていく。龍太は少しずつ闇に引き込まれていった。
行かないで・・・行かないで・・・行かないで。なんで行ってしまうの?置いて行かないで。
遂に龍太は闇に消えてしまった。
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