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「チュンチュン」
朝、小鳥の鳴き声で私は目覚めた。時計を見ると6時を指していた。
私は朝ごはんを食べ、制服に着替えて学校に行こうとしたその時だった。心臓が握られる感覚に襲われた。
「く・・・」
それを見ていた弟と母が私の異変に気付いて近づいてきた。
「姉ちゃん!」
「ちょっと澪!大丈夫?」
結局、その日は学校に行くことは出来なかった。私はずっと自分の部屋で好きな漫画を読んでいた。
時々、武からLINEが来た。
「どうした?今まで休んだことないのに」
とか
「体調不良!?お見舞いに行こうか?」
とか近所のおばあちゃんのような事を言ってきた。
相変わらずだなぁと私は思いながらも、武のその心遣いが好きだった。ほんのりと自分の心が和らいで行く感じがした。
下校時間になり、私と武は近くの公園で会うことにした。
私は武より先にいつもの公園に着いた。昨日のことを思い出してしまうようで待っている間とても怖かった。
「澪、大丈夫なのか?」
武はそう言いながら近づいてきた。
「うん。大丈夫」
私はへへと照れ笑いをした。
本当に心配してくれているのだなと私は思った。
「それじゃ、行こっか」
「うん」
6時だったが空はもう暗かった。龍太がいないのが堪らなく悲しかった。彼に会うことはもう二度と無いのだ。
武はいきなり私の手を握ってきた。
「ちょっ!?」
私は反射的に手を離そうとしたが、武は強く手を握りしめてきた。
彼の手は温かくてゴツゴツとしていて大きかった。男の子の手なんだなぁと少し嬉しかった。
周りの景色は少しも変わっていなかった。
田んぼの間にポツポツと建っている家々。海の潮の匂い。
海に近づくにつれて潮の匂いが強くなっていった。空は満開の星で輝いていた。
私と武はいつも通り浜辺で寝っ転がった。
海風が私たちの心を癒していく。
「星、綺麗だよな」
「うん」
武の眼差しは何だか哀しそうだった。
「龍太はこの星の中にいるのかな」
私はよく考えると何を言っているのかよく分からないが、武の言葉は不思議と感覚的に理解出来た。
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