29(承前)

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 同時に狙撃銃の発射音が鳴り、別な悲鳴が聞こえる。タツオは腕時計を見た。まだ朝の7時半にもなっていない。午前中をなんとか戦い抜くのが、今回の戦闘訓練の目標だ。秋の朝、北不二演習場には冷たい秋風が吹き渡っていた。  午前8時5分前、全員がタツオのもとに集合した。負傷者1名以外は全員が無事だった。クニがこぼした。 「この訓練服は敏感過ぎるんだよ。弾は服にかすっただけなのに、もう左の足は動かない。やってられないぜ。しかも嫌になるくらい電撃しやがるし」  テルが歯をむきだして笑った。 「おまえの悲鳴はよく聞こえたよ。お漏らしはしなかったのか」 「うるさい。そっちこそ玉を撃たれちまえ」
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