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「ここが近くの道具屋だな。足を踏み入れる前に、良太に言っておく事がある。どんなイベントが起こるか分からないから、気合を入れておけよ」
父ちゃんの足は予想以上に早くて振り切れなかった。冷静に考えれば、財布は父ちゃんが持っているのだから一緒に行くしかない。でも、生理的に逃げたくなったんだ。
「さて、先ずは武器だ。ダンジョンと違って種類は少ないが、幾つか置いてあるな。強さと価格を気にしないなら、耐久力で決めるか。耐久力が高いものは魔王に効果的だが、帰り道の負担になる。さあどうする、勇者よ!」
声が大きい。店員がチラ見しているから黙ってくれ。
「おおっ、普通の武器を選んだな。冒険初心者としては合格だ。次は防具を探すぞ。なんだかワクワクしてきたな」
それはお前だけだ。財布だけ置いて、帰ってくれないかな?
「ほう……防具も普通の物を選んだな。基本に忠実な事は良い。だが、とうとうハプニングが起きてしまったぞ。これを見ろ!」
いちいち煩い父ちゃんの指差す先は、普段は片栗粉が置いてある棚だった。しかし、何も置かれていない。どうやら売り切れらしい。
「どうする? ここでの選択肢は三つ。道具屋のオヤジに聞く、ダンジョンに行く、諦めて帰る。さあ、どれを選ぶ?」
勝手に選択肢を出すな。
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