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進める。
もう言葉を掛けることもなくカゲミナの前を通り過ぎ、そのまま部屋へと向かえば。
「てめぇは殺す以外、不器用すぎんだよ」
小さく聞こえた、カゲミナの声。
聞かせるために呟いたのか。
それとも聞こえてしまった呟きなのか。
「・・・余計なお世話だよ」
どちらだっていい。
ゼンも同じように呟いて、天井を見上げながら苦笑した。
多分、今セツナの心の中に俺はいない。
それだけで苛立つなんて。
どれだけ彼が好きなのか。
――――本当に、余計なお世話だ。
苛立ちで隠れている筈の胸の痛みを、自覚させられてしまうのだから。
~ * ~
この世界は大規模な戦争が行われていたが故に、その傷跡が多く残ってしまった。
それら全てを片付け、修復することは難しく、その上に重ねるように人間たちが新たに住む世界が作り上げられた。世界は上層と下層の二つに分かれたのである。
その戦争の傷跡が残ったままの下層にブラックは身を置き、裏社会の管理・・・世界の頂点に君臨する“政府”からの依頼を待つ。裏の問題を処理する時を待つのだ。
こうして上層は人間の世界。下層はブラックの世界と、本当の意味で世界は二分することとなった。
ブラックからは上層に住む人間のことをホワイトと呼ぶようになり。
それはまさに陰と陽。
光と影。
ホワイトとブラック。
これが、
戦争が終わった世界の姿だった――――
Chapter1
End
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