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「おかーさん、これ入金しといて!」
鏡子が自分の部屋から出てきた。
リビングにいるお母さんを捜す。
しかし、リビングには誰も居なかった。
…………どうしよう、これの支払い今日中なんだけど。
今は夜の七時。
お母さんを捜しているうちに支払いの期限が来てしまいそうだ。
鏡子は散々悩んで、自分でコンビニに行く事にした。
緊張しながら着替えをして、振り込み用紙と財布を手にして家を出た。
こうやって、まともに外に出たのはいつぶりだろう…………
何だか、とりあえず深呼吸して外の空気を吸ってみた。
冷たくて心地よい。
鏡子は、誰も歩いていない道を一人辺りの景色を楽しみながゆっくり歩いた。
家から10分くらいのところにあるコンビニ。
オープンしたばかりの時に来た覚えはある。
それからもう数年。
鏡子の引きこもりの年数と同じくらいの時を重ねたこのコンビニは人々が絶えずやって来る場所になっていた。
鏡子は店内に入らず、ガラス越しに中を眺める。
店内に人が居ないか確認するためだ。
…………雑誌のところに一人、それから飲み物のところに二人。
店員は二人いる。
金髪の女性の店員がレジのところにいて、黒髪の男性の店員 が店の外のごみ箱を片付けたりしている。
鏡子は、金髪の女性がとても怖く見えて、レジ担当が男性と代わるのを待った。
ただ、お金の払い込みをするだけ。
それだけなのに、鏡子にとっては久しぶりの家族以外の人との接触。
あんな怖い感じの人に近づく勇気はなかった。
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