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…………全然、交代しない。
それから、30分くらい経っただろうか、相変わらずレジの傍には女性がいて、男性はトイレ掃除か何かに行ってしまった。
鏡子は不安に駆られて、男性が行ってしまったトイレの方を外から見詰めていた。
「あんた、さっきっからいったい何やってんの?」
いきなり鏡子の傍で声がした。
驚いて、身体を震わせる。
そして、声をかけられたのが自分だと分かると、身体が強張った。
「あんた、佐藤の言ってたストーカーだよね?そんなことやって良いと思ってんの?」
女性の声が、激しくなる。
いったい何のことを言っているのか全く分からないが、女性が怒っていることだけははっきりわかっている。
そして、その恐怖で声が出ない。
「ちょっと、聞いてんの?何も言わないんなら、このまま警察に突き出すからね!」
…………警察、何も悪いことしてないのにそんなところに連れて行かれたくない。
そう言いたいのに、無意味に閉じたり開いたりを繰り返す口は言葉を発してくれない。
恐怖でパニックになった鏡子は、呼吸が苦しくなり涙まで出てきた。
「あのさぁ、泣くくらいなら、最初っからやるなってんだよ。あいつもすごく困ってるんだからさ。」
鏡子は居たたまれず、その場から逃げた。
とにかく、その場から消えたかったのだ。
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