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それなのに、背中を擦る手が一人の世界に消えようとするのを邪魔する。
何度振り払っても、その手は居なくなってくれない。
「大丈夫だから。誰も何もしないから。」
誰かに抱き締められた。
そして、落ち着くまでずっと背中を擦っていてくれた。
…………それから、30分くらい経っただろうか、鏡子がようやく顔を上げると、そこには先日会ったコンビニの店員がいた。
鏡子が怖いと思っていたその金髪の女の人は、今日はとても優しい表情で私を見詰めていた。
「あ、す、すみません!」
鏡子はとっさに謝って身体を離す。
「もう大丈夫か?」
「は、はい。」
「そりゃ、良かった。」
その人が立ち上がり、一緒に立ち上がる。
「あの、何かうちに用があったんですよね?」
「あ、うん…………」
今度は彼女の方が俯いてしまった。
「あのな、実は、謝りたいことがあって。」
「え?私ですか?」
「…………この前、あんたをストーカー扱いして怒鳴っただろ?あの後、佐藤から話を聞いたらストーカーしてたのは全然別の女だったみたいでさ…………その、ごめん。」
その不器用な謝罪に、鏡子は思わず笑ってしまった。
「その、本物のストーカーの方は捕まったんですか?」
「あ、いや。まだ佐藤の周りをうろついてるみたいだ。」
「そうなんですか。早く捕まるといいですね。」
「…………あんたは、勘違いされて犯人扱いされて怒ってないのか?」
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