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「蒼、キミはアディスタール家の血を繋げていく可能性が一番高い。そのお腹にグレンラカンの子が宿っているかもしれない」
「アスレイ、先走りすぎだ。蛹が羽化してもただの蝶である可能性も――」
「あぁ、もちろんそうだ。そうであれば、わたしは生きながらえる。だが、手札は多ければ多いほどいい」
蒼は拒否を許さない絶対的な王の権限を振りかざされ、何も言えなかった。
「グレンラカン、蒼、ここから去れ。国へ戻り、王族としての役目を果たせ」
本当に、それでいいのだろうか。
屋敷にいる人達の中には、事情をまったく知らない者もいるはずだ。
蒼は顔を上げて悲しげな表情で視線を絡ませてくるグレンラカンに視点を合わせた。
「グレン、ごめんなさい」
蒼はグレンラカンの腕をすり抜けた。
蒼に一瞬にして首飾りを奪われたアスレイが「やめないか!」と怒鳴る。
「やっぱり納得できません。ごめんなさい。王様に逆らったらどうなるかわかっています――でも、わたし……」
蒼はアスレイとグレンラカンに向かって、頭を下げた。
グレンラカンは、何も言わずにただ、蒼を見ているだけだった。
「アスレイ、俺も蒼と同じだ」
グレンラカンが蒼の隣に立つ。
蒼の手を握り、甘く艶めいた視線を投げかけた。
「こら、暴走女。俺をひとりにする気か?」
「だけど――」
「俺と結婚するって宣言しただろ」
「そう言ったけれど――」
「行こう」
グレンラカンが中へ入ろうとした時だった。
「お待ちください! 今まで黙っておりましたが――」
セクトチャールがグレンラカンとアスレイの間に立ちはだかる。
「影響を受けたのは三人では、ありません。四人だったのです!」
「セクトチャール、どういうことだ?」
アスレイが険しい顔をしている。
「わたしが、そうだったのです! 悪魔の薔薇と接触を持ちました!」
「それは……いつのことですか?」
「蒼様がいらしてから少し立った頃のことです。わたしの意識とオーレリアンの意識がリンクして……お互い夢の中で――」
蒼はオーレリアンがセクトチャールの部屋から頬を赤らめてフラフラと出てきた時のことを思い出した。
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