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「無茶をして!」
アスレイの口調は強い。
だが、顔は今まで見たことがないほど焦りと恐怖で引き攣っている。
「このバカ!」
グレンラカンが蒼の腕を乱暴に掴んで抱き締める。
「ごめんなさい」
「何ともないか?」
目の形がなくなってしまうほど、グレンラカンの顔は崩壊寸前だった。
「もしかして、泣きそうなの?」
「違う!」
即座に否定するグレンラカンの顔を下から覗く。
「大丈夫?」
わざと、からかうような口調で言った。
「暴走女」
「いいじゃない。終わりよければすべてよし。もう、悪魔の薔薇に煩わされることはないわ」
蒼はアスレイの方へと身体の向きを変えた。
「陛下、勝手なことをして申し訳ございません。どんな処罰でも受ける覚悟でおります」
身体を折って、深々と頭を下げる。
「そうだね……キミは王の命令に背いた」
その声には、情らしきものが窺えなかった。
「しっかりと罰を受けてもらうことにしよう。王族としての責務を放棄したグレンラカンと共にね」
結婚も白紙になる――。
蒼は覚悟を決めるしかなかった。
王として、他者の命を奪おうとしてまで秘密を守ろうとしたくらいなのだから。
厳罰は免れない。
蒼は、グレンラカンへ視線を向けた。
グレンラカンもまた蒼と同じく不安そうに瞳を陰らせていた。
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