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5年付き合って結婚した彼と彼女。
大学時代の同級生であった二人は友達期間も長く、付き合いの総合的な長さゆえに新婚なのに熟年夫婦感が漂っています。
「……これではいけない」
「んん?」
テーブルでのんびりと緑茶と栗ようかんを楽しんでいた際、唐突に彼女が呟きました。
湯飲みを口元にあてたまま、彼は眉を上げて疑問を示します。
「私たち、付き合ってた頃からのんびり安定、あうんの呼吸で熟年夫婦感MAXだったけど、せめて新婚さんな間くらいはこうじゃいけないと思うの」
「なにを言ってのかなんとなく分かるけど意味が分からないよ」
思わずそのまま湯飲みを置いてしまった彼の困惑ぶりをよそに、彼女は続けます。
「だからね、せめて呼び名くらいは工夫しようと思うの」
「思うの、って俺に拒否権はないのね」
「ないよ」
即答して、彼女は宣言しました。
「私はあなたを【旦那くん】と呼ぶから、あなたは私を【嫁ちゃん】って呼んで」
「今、『呼んで?』って語尾が疑問形ですらなかったよね。提案という名の命令形だったよね」
早口で確認する彼に、彼女は冷たい一瞥。
「お義父さんとお義母さんに『父』『母』と呼びかけているあなたですが何か文句がありますか」
「いいえ全く……」
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