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わたしの人生は幸せだった。
美智子は天井にある灰色のしみをぼんやりとみつめる。
でも平凡だった。
毎日いくら観察してもしみは形を変えることなく同じだった。
数年単位で少しずつ形を変えているのかもしれないが、毎日見るしみはまるで変化がなく、それは美智子が今まで過ごしてきた日々と似ていた。
ピクリと美智子の手をにぎる夫の手が動いた。
美智子は自分の左手に夫のぬくもりを感じながら天井のしみの輪郭を目でたどる。
私はこの夫を本当に愛したのだろうか?
平凡な出会いだった。
勤め先で知りあい、数年つき合ったあと結婚し、数年して子供ができて寿退社をした。
2人の子供に恵まれ、夫は高給取りではなかったが勤勉で郊外に一軒家を30年ローンで購入し、定年までちゃんと勤めあげてくれた。
小さな浮気のひとつもせず、酒は家でたしなむていど、ギャンブルにはまることもなく、絵に描いたようなまじめ一筋の夫だった。
口数は少なく外国人の男がつかう「愛している」などという言葉をとてもじゃないが口にするような夫ではなかった。
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