赤い糸

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 何十年まえのことを、ずっと思い出さなかったことを、今さら思い出すなんて。  それもこんな死ぬまぎわに。  そうだ。私はもうすぐ死ぬのだ。  美智子は痩せて細くなってしまった自分の左腕を見つめる。  針が差しこまれ、点滴のチューブがそれにつながっている。    腕のその先には、夫ににぎられる自分の手があった。  美智子は再び眠る夫の顔を見あげた。  私はなぜ、この人と結婚したのだろう。
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