赤い糸

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 美智子が幼稚園にあがるころ、父の転勤で家族全員で東京に引っ越すことになった。  東京行きの新幹線の線路に赤い糸は伸びていた。  小学校、中学へと美智子はすくすくと健康に成長した。  赤い糸はいつも美智子の左手の小指にしっかりと結びつき、解けることはなかった。  美智子のまわりをぐるぐると優しくまとわりつき、そしてどこか遠くに繋がっていた。  高校入試で美智子は私立高校ではなく公立高校に進んだ。  公立高校のある方角に赤い糸は伸びていた。  高校で美術部に入るか吹奏楽部に入るか悩み、美智子は美術部に入ることに決めた。  やはり赤い糸は美術部の部室の方に伸びていた。  初めてアルバイトしたレストンの方向にも、そのアルバイ情報誌を買った本屋にも赤い糸は伸びていた。
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