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夕暮れの中、自転車をおす青年のうしろ姿が照らしだされた。
彼の右手の小指からは赤い糸がどこか遠くへと伸びていた。
美智子の赤い糸はその時、高く空へと伸び、白い雲の影に隠れて見えなくなっていた。
大学は第一志望と第二志望に落ち、仕方なく第三志望の大学に進学した。
大学は家からも遠く美智子は毎朝早起きをして下りの電車に乗らなければならなかった。
いつもその電車と一緒に赤い糸は走っていた。
大学の時に告白されて付き合っていた恋人と美智子は肩を並べて浜辺を歩いていた。
二人の手は繋がれていたが、赤い二本の糸は絡み合いひどくもつれるだけで、糸の先はお互い違う方向に伸びていた。
そのあとすぐに二人は別れた。
一人部屋で涙を流す美智子を、赤い糸は包み込むようにぐるぐると巻きついていた。
まるで悲しむ美智子をやさしくなぐさめているかのように。
この頃から糸の赤が強く輝きをますようになってきていた。
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