記 憶

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記 憶

 どうして私だけ、思い出さなくていい事まで分かってしまうのだろう。  ずっとそうだった。前世でも、その前もずっと。  この人と毎回出逢って、毎回恋に落ちて、そして抱かれて…  そう、本来前世の記憶はこの肉体(イレモノ)から魂が剥離した時に思い出すもののはず。 なのに、何故か私だけは違う。  毎回、前世の記憶が蘇るタイミングは一緒だった。 逢瀬の時、体が一つになった瞬間に、それまで堰き止められていた記憶が、ダムが崩壊したかのように一気になだれ込んでくるのだった。  そうなってからはもう手遅れだった。 それまで蓄積された恐怖で、もうこの人には逆らえなくなるのだった。
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