2 遥か東京

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 完璧なものなどどこにもないよ、と言おうとしてやめた。俺はどこか歪んでいる、それは昔から気が付いてはいることだった。多分他人とは違うように出来ているんだろう。俺からすれば御田のほうが完璧な人間だった。    行きつけの居酒屋は今日も客が少ない。決して安いとは言えなかったが、この静寂に金を払っていると言っても間違いはない。この騒がしい街の中では貴重な場所だった。   「そう言えば昨日妻と別れたよ」 「え」  そんな重いことをさらりと言う。もとから離婚に向けての話をしているとは聞いていた。学生時代からの純愛を貫いた、そんな二人が何故。   「時が経てば人は変わるもんだ。もうここにあの頃の二人はいなかったんだよ」  ろくに恋愛経験のない俺にはわからないが、確かに変わらない人間はいない。それが良いものかは俺にはわからないけれど。さっそく酔っぱらってきたのか御田は俺を見て首を傾げて笑う。   「お前に手を出したいと言ったらどうする?」 「冗談はやめたほうが良いよ」 「はっは、誰が冗談だって?」  カクテル数杯でもう酔っている、こうなると御田は手に負えない。   「今度俺の新居に遊びに来いよ、吉祥寺だからお前の家からでも電車に乗ればすぐだろ?」 「かつての若者に人気の街には興味はないよ。時代はもう過ぎ去った」 「そうか? 暮らしやすいとは思うがね」       
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