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しばらく見ていたものの二人はどこにも行く様子がない。誰かに連絡を入れたような気配もなく、怯えた顔して呆然と立っていた。
「……おい、そこでなにやってるんだ?」
自分でも驚いている、大人になって多少は慣れたとは言え、人間が苦手なことに変わりはなかった。その俺が見知らぬやつに声をかけた。しかし少年たちはさらに怯える。
「別に警察でもひとさらいでもない。もうすぐ終電も行ってしまうから。今夜のあてがあるのなら早々に移動したほうが良いよ。この街は治安が悪いから」
そう言うと兄とみられる少年は遠慮がちに答えた。
「どこか安く泊まれる場所はありませんか? 僕たちお金がないんです」
「保護者は?」
「……いません」
二人の目が俺に願っている、どうか助けてくださいと。
この感情を知ってる、俺もかつて『彼』に助けを願ったから。
◇
混雑した終電に乗り、たどり着いたのはなじみの古いアパート。2DKで古い風呂とトイレがかろうじて付いている部屋だった。景色にこだわりはないし一人で暮らすのならこれで十分。そんな部屋に二人を招いた。
遠慮がちに部屋に上がる二人、兄は脱いだ靴をそっとそろえた。
「見ての通り三人では少し狭いな、ああ、荷物は隅に置いて構わないから」
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