16 宿命

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 真新しい切り花に彩られ、ここに眠る人はきっと愛されている。  それでもどこか孤独を感じるのは何故だろうか。   「だい、ぜん……」 『大前十六夜』そう記された墓標、見覚えのある名前。  ああ、確か『彼』は著名な画家だった。若者に愛され、いまでもこうして忘れられていない。でも、彼は寂しい人だった、優しい顔して笑うのに……。   「あ……?」  大前十六夜、会ったことすらないはずなのに何故その笑顔を知っているのか。   「ああ……!」 『僕はこの世から忘れ去られるのが怖いんだ』  どうして俺は忘れてしまったのだろう。  先生。  もう過ぎ去りし過去の人。  寂しく一人で死んでしまった人……。  あんなに孤独をなにより恐れていたと言うのに。   「ご、ごめんなさい、先生」  こらえきれずその場に脚から崩れ落ちる、そして俺は子どもみたいに声をあげて泣くしかなかった。    ◇    それからはどうやって帰ったのか覚えていない。  ただ茫然と夕焼け空に酔いながら、気が付けばアパートの前に立ちすくんでいる。   「おい!」  力の入らない腕をつかんだのは、焦った顔したハルだった。   「お前、どこ行ってたんだよ! 逃げる気にでもなったのか?」 「いや、そんなつもりは……」 「じゃあ、なんで!」     
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