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ハルとしばらく見つめあう。焦った顔をしたハルのなかに怯えている少年が見える。ああ、はじめて会った場所は、たしか……。
どうか、誰か忘れてしまった記憶を思い出す方法をどうか教えてくれないだろうか。
「ぼけっとしてるんじゃねえよ、帰るぞ」
そしてハルは俺の手をひいてアパートの部屋に入っていった。
◇
それきり俺の記憶は戻らないまま数日が経つ。
夢うつつの俺を心配してハルは仕事を休んで病院に連れて来た。
何時間も待って診察を受けるも、曖昧なことしか言わない医者にハルは腹を立てている。帰り道に病院のそばの公園に寄った。
自然公園と言うのだろう、敷地は広く緑が多いので歩いていても退屈しない。公園のそばを流れる川の欄干から景色を見ていると、ハルはぐいと強く俺の腕を引き足早に川から離れた場所へ。
「ハル?」
「こんな景色みるんじゃない」
「何故?」
「ここは忌々しい場所なんだよ、思い出したくもない!」
その言葉の強さと相反して、ハルはなんだかいまにも泣き出しそうな顔をしていた。一体何がここであったと言うのか。
ハルはいくら聞いても答えずに、ただ黙って二人帰宅するだけだった。
◇
その日の晩、夢を見る。
あの川の欄干の景色だ。
隣にいる誰かのために俺のできることはそれしかなかった。
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