17 春の終わりは

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17 春の終わりは

 ただ絵を描く日が続いていた。 心の中にある風景は未だ曖昧で、時折見覚えのあるものが見えたりとの一進一退。ハルはこの頃では落ち着いて、たまに柔らかい表情を見せる日もあった。 「おい、なにやってるんだよ」 「あ、おかえりなさい。ハル」  いつの間にか夕方になっていた。一日中絵を描いていたせいか右手は真っ黒。スケッチブックもしわができるほど。   「おかえりなさいじゃないだろ、飯くらい食えよな。身体に悪いだろ?」 「……心配してくれるの?」 「ばか」  本当は優しい、そんなハルの性格もこの頃では理解できるようになった。    共に夕食を囲み、夜は更けてゆく。  食事を終えてまたスケッチブックに手を伸ばした俺に、ハルは待ったと言うように手を伸ばす。   「絵はもういいだろ、少しこれから散歩に行かないか?」  ◇    二人で向かうのは住宅街にあるコンビニエンスストア。  夜を迎えてはその道のりに人影もあまり見ることはない。   「なあ、ちょっと昔の話をして良い?」  そう言ってハルは俺を振り向かずに語り始める。   「オレさぁ、以前好きな人がいたんだよね」 「どんな人?」 「背がでかくて絵がすげー上手い人! オレに絵を教えてくれた」     
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