17 春の終わりは

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 かつて『三人』で歩いたじゃないか。  瞬間、ハルは俺を音を立てるように抱きしめた。  強く強く、いままでの感情をぶつけるように。   「青山さん! あんた幸せになれ、幸せになれよ……! オレやアキのことは忘れても良いから」  そのとき俺は心の奥底にたどり着く。  ここからは懐かしい顔が俺を見ている、祖父母、大前、そしてアキ。    俺を愛したひとたちはみんなみんな笑顔だった  そして遠く遠く手を振って。  もう戻れない風景、だけどなんて愛おしいのだろう。   『大丈夫ですよ、青山さん』  アキの優しいその笑顔はまるで二人の未来を祝福してるかのよう。    だけどもう……いってしまったね。   「……幸せなるのはお前のほうだよ、ハル」  忘れるものか、お前だってこうしていま生きているのに。  ハルを抱きしめ返し、そっと優しくキスをした。   「ハル」 「青山さん……思い出したのか?」  二人、涙が止まらなかった。    この世に残された俺たちは。  生きなければ、のこされたものとして精いっぱいに。  今年の桜はもう散ってしまった。  けれど春はまたやって来る、生き続ければまた来年も再来年も。
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