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最終章 守るべきもの
あれから数年の月日が経った。
未だ忘れていることも多いが、社会復帰をして新たな気持ちで生きているつもりだ。
「あれ、青山もう帰るの?」
「仕事は終わったからな、待ってるやつがいるんだよ」
「はは! 記憶喪失になってもやっぱりお前はマイホームパパだな」
仕事は相変わらずの講師業、俺をからかう御田と言えば最近いい相手が見つかったようでそのうち紹介してくれるらしい。
学校からの山手線、帰宅ラッシュで本数は多いが混んでいる。
東京の空気にはもう慣れた。
殺伐としながらも、それはここではない場所で皆それぞれに守るべきものがあるからだと。
そう、俺にもある、守るべきものが。
◇
「ただいま」
「よう、早かったなー」
かつての自宅アパートから引っ越して、私鉄沿線のベッドタウンのマンションに引っ越した。大丈夫、思い出は心の中に溢れるほどあるから。
「ハル、病院は行って来たのか?」
「あー、すっげえ混んでるの! 少子化はどうなったってかんじ」
大きなお腹をさすりながら出迎えてくれた、ハル。
生き残ったふたり、ハルは俺の生きる上での同志だ。
結婚をしてちょうど一年になる、ハルのお腹には俺の子どもがいた。
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