最終章 守るべきもの

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「最近、こいつ良く動くんだよ、触ってみ?」  ハルの言うままに触れたお腹、しばらく撫でまわしているとピョコ、と反応があった。元気そうで何より。 「なあ、ハル聞いたか? 性別のこと……」 「おー聞いた聞いた! 男だってよ」  その言葉を聞いた途端の俺たちは、きっと同じことを考えた。 「お前、元気に生まれて来いよなー、聞こえてるか?」  子どもが出来てから、ハルはだいぶ優しい顔になった。 『母親』になってきているのだろう。その表情でいつも俺が守らなければ、と俺は強く思うのだ。 「おい、お前は幸せになるんだぞ。一人ぼっちじゃないんだからな」  そしてまた優しくお腹をさするハル、大きなお腹は幸せのたまもの。   「ハルー、俺親ばかになりそう」 「はは! わかる気がする」  そして二人そろって大きな背中に触れ、愛おしいもの語り掛ける。   「元気で生まれて来いよな……待ってるから」  ◇   「落ち着けよー、青山」 「無理、こんなときに落ち着けるか!」  連絡を受け駆け付けた病院では、分娩室の前で座る気にもなれない。  ドアの向こうではハルが戦っている。  大丈夫なのか、本当に無事生まれるのか?       
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