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「青山! 父親がそんなのでどうするんだよ。これから一生お前がしっかりしないと家族が路頭に迷うんだからな? どっしり構えてろ!」
「あ、ああ……」
だけどもう出産が始まり四時間も経つ、ハルは大丈夫なのだろうか……。
耳をひそめて分娩室の様子を伺っていた時、なかから大きな泣き声が聞こえた。驚きと安堵のあまりその場に腰が抜けたように座り込む。御田はそんな俺を見て笑った。
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」
やって来た看護師のあとについて分娩室のなかへ。
そこには疲れた顔したハルの胸元に小さな命が……。
その姿を見てこらえきれず、俺は情けなくも嗚咽をもらしながら泣き崩れた。
「なんだよ、なっさけねえなー! そんなところにいないでこっちきてほら、よく見てみろって」
ハルに抱かれ寝ている子ども。
その小さな手のひらに指をやると、ぎゅっと小さな手で握り返した。
こんどこそ幸せになるんだぞ。
お前もハルも俺が幸せにしてやるから。
「お帰りアキ……また、会えたな」
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