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2 遥か東京
未だ人生を知らず、25歳にしてただ絵だけを描いて生きて来た。独りよがりで稚拙な技術だと言うことは百も承知。それでも描くことはやめられない。誰かに評価してもらいたいのだろうか。それともこれが俺のアイデンティティだと? そんな大それたものじゃない。しいて言えば俺の淀んだ感情を吐き出す術。綺麗な生き方なんて出来ない。この孤独な人生で学んだことは歪んでどろどろとした愚かなもの。価値はなかった、絵にも俺にも。
朝の山手線は今日も混雑している。どこからこんなに人が集まったのか、その肌が触れるほどの距離、停車するたびにまるで人をモノを扱うかのように皆お互いを押しのけて降りて行く。目と目が合えば睨み合い、見知らぬ悪意がまた通り過ぎて行った。
◇
もともと俺は東京の生まれではない。生家は海の見えるところにあり、市街へと向かうバスは1時間に1本あれば良いほうだった。涼しい季節にはよく一人でスケッチブックと鉛筆を持ち浜辺に行ってはデッサンばかりしていたっけ。口下手な子どもだったから絵だけが俺の自分の感情を表現する方法だった。
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