序章

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 どこに行くときだって、帽子は手放せない。いつも深く被って顔を隠している。そうしていても、後ろ指を指されて笑われたり、ひそひそと囁き合う声が聞こえてくる。私だって、好きでこんな格好をしているわけじゃない。 『前を向いて生きなさい。幸と不幸の量は等しいの。辛くてもいつかきっと幸せはやって来るから』  母の言葉を思い出す。でも、もうどうしたらいいのかわからないよ。もう頑張れないよ。  あいつらに負けたくない。それでも……────。
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