本物

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「はい、カーット!!!」 監督の声にあたしは彼から我が身を離す。 「よかったよー!2人ともー」 「ありがとうございます」 「ありがとっす」 2人とも監督にペコッと頭を下げて、歩き出す。 「終わったな。撮影」 「だね。お疲れ様」 彼とはこれではじめての共演だけど、はじめから喧嘩ばかりで正直このままで大丈夫なのかって不安になった。 早く終わればいいとばかり思ってた。 でも終わってみれば、彼と会えなくなるのは寂しいかもしれない。 「もうこれで会わなくなるな」 「うん、せいせいするわ!」 心にもなく、可愛げのない言葉が出てくるこの口が嫌だ。 もっと可愛げのある女の子だったら、ここで連絡先とか聞いたりするんだろうな。 「なぁ」 「ん?」 「びっくりしないで聞けよ?」 そうあたしに念を押したあと、ポケットからなにかを出してあたしの手の平に乗せる。
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