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「いいなー、いいなー、カッコイイ時計!」
五月が全力で羨ましがると、父が思いついたように言った。
「じゃあ、次に会うときまでにお姉さん二人にも似合う時計を探しておこう」
「えっ」
倉知と倉知の父が驚いて声を上げた。
「えーっ、本当ですか!? すごい、嬉しい、やったー」
二人がすぐに「五月!」と咎める声をはもらせた。
「お前、どんだけ図々しいんだよ。すいません、こいつらにまでそんなことしていただかなくても大丈夫ですので」
倉知の父が五月の頭を叩く。
「そうですよ。さすがに受け取れません」
ダイニングテーブルに座っている六花が、困った声で訴えた。六花らしい反応だ。拒まれた父が悲しそうに肩を落とす。
「タイプの違う美女二人の時計を選べるなんて滅多にない機会だし、非常にワクワクしてるんだが……、どうしても駄目でしょうか」
最後は倉知の父に訊ねた。もうここまで来ると完全に変態だ。どん引きされてもおかしくないのに、倉知家の人々は鷹揚だった。
「えっと、あの、参ったな。そこまでおっしゃってくださるなら、もう、お言葉に甘えます」
倉知の父が頭を掻く。
「やったー、楽しみ! ありがとうございます!」
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