倉知編 「第二ボタン」

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 今日の夕方、二年と一年の部員が送別会を開いてくれることになっている。出席する、と言ってあるのに、と首を傾げると、マネージャーがはにかんだ。 「ただの確認です」 「うん、行くよ」 「よかった」  幹事をやっているのかもしれない。顔をほころばせる睦美の背後から、丸井の彼女の瑞樹が抱きついた。 「むっちゃん、貰った?」 「ちょっと、しっ」  慌てて口に人差し指をあてる睦美に「何が?」と訊いた。睦美は答えずに瑞樹の頭を叩いた。 「第二ボタンですよぉ」 「瑞樹」 「あたしも貰いました、ほらっ」  瑞樹が手のひらの上のボタンを嬉しそうに見せびらかしてくる。 「第二ボタンって好きな人から貰うってやつだよね」  確認すると、睦美の顔が赤くなった。胸騒ぎがする。まさかと思うが、この子は俺が好きだったのだろうか。 「本来は、そうです。でも私、そういう意味じゃなくて、先輩のことは尊敬っていうか、その、ボタン貰えたら、先輩の意志を継ぐみたいな感じで部活がんばれるかなって」  わたわたと言い繕う睦美を見下ろしながら、なるほど、と納得した。睦美は純粋にバスケが好きだ。励みになるならボタンくらいいくらでもあげたい、と思った。  第二ボタンを力任せに引きちぎると、睦美と瑞樹があっと声を上げた。 「俺のでよければ」     
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