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あり得るかもしれない未来を分散型バージョン管理システム「Git」のようにアーカイブし続ける。未来の科学技術が関わるヒトと社会の問題を、物語の形式で記したジャーナリズム。新しい世界のありようにそなえるための予防接種―それがSFだ。未だ実現されていない科学技術はあれど、引き起こされた事件は驚くほど現実と地続きである。どのように私たちは科学技術と付き合い、浸透した社会の中でどうやって生き抜き、ココロと身体の変化にどんな姿勢で向き合えばいいのか。
今使われている科学技術が果たして正しい目的で使われているのか、私たちに良い価値を与えてくれるものであるのか。科学技術に関する目的と価値、倫理的問題と限界について私たちは知る必要がある。でなければ万が一科学技術が関わる問題に巻き込まれた際に正しい判断が不可能となってしまう。
これが「のび太のテロ」。
インターネット崩壊論者のtss氏によって命名されたこの言葉は、身の丈にあわない技術に翻弄されてトラブルを巻き起こすことを示す。ドラえもんにおいて、のび太くんは毎回なんらかのトラブルに巻き込まれている。そしてドラえもんに泣きつき、問題を解決するための道具を借りる。結果のび太くんが道具を悪用したり想定外の方法によって使用することで、さらなるトラブルを巻き起こす―
技術が悪いのか社会が悪いのか。ワケの分かっていないものをワケの分からないまま、便利だからと使うことでトラブルを引き起こす。そんな「のび太のテロ」は、もはや他人事ではない。
あらゆることが自己責任として片付けられてしまうように、人々が下さなければならない決断とその結果についての責任の重さは、日々増すばかり。このような状況の中、私たちは科学技術と社会が密接に関わる時代をこれからも生きなければならない。科学技術の安全神話が完全に崩壊した、いや、そもそも安全神話など始めから存在しなかったのではと露見した今、テクノロジーに関する決断の責任をも私たち一人ひとりが受け止めなければならない時代が遠からずやって来るだろう。
本書は社会派SFに描かれているそんな未来に立ち向かうための知恵を、12の問いから導き出すものだ。あり得るかもしれない未来にそなえる防災ガイドとして、そんな物語をつづる際の事典として参考にして頂けると幸いである。
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