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「一つだけヒントをあげよう」 「ヒン、ト…?」 目をこすりながら顔をあげる。すると、右手の人差し指を立てて私を見るハシ先がそこにはいた。 「そう。あのな、木内、学校が世界の全てじゃないんだ」 「うぐっ、えぐっ、はい…うっ」 「つまりだな、お前が思っている以上に、世界は広いし、お前の選択肢は沢山ある。こう考えてみたらいい。人生は白いキャンバスなんだ。お前が「こう描きたい」と思えば、どんな人生にだってできるんだ」 「うっ…ほん、とですか…」 「あぁ、ほんとだ。そうなろうと頑張れば、な。先生だって、大学入るまで教師になろうなんて思ってなかったんだぞ」 「え…」 「ははっ、意外か」 「意外、です…」 「でもな、やってみたらまぁ、やりがいがあるし、意外といいもんなんだよ。そう。どこに行ったって、幸せは必ず落ちている。そこで出会った人が、かけがえのない誰かになるかも知れない。未来をどうするかじゃなくて、その時その時にある幸せを探す努力をしよう、な?人生、思い通りに行かなくたって、幸せを探せば幸せになれるんだよ」 先生は、にかっと笑った。私を励ますように。 すると、私の目の端からはボロボロボロボロと、今まで堰き止めていたものが一気に溢れだした。 救われた気がした。私は、今、ずっと悩んでいた何かから、この人に救ってもらったんだ。その安心感からか、どうしても涙が止まらない。 「おいおい、そんなに泣くと目が腫れちゃうぞ~?」 困ったように眉をハの字にして、ハシ先は私にハンカチを差し出してきた。 「あり、がとうございます…っ」 そういうところに、心があったかくなって、少しどきっとする。 手渡されたハンカチで、ぽんぽんと目の端を拭く。 ハシ先が教えてくれたこと、”今”を大切に生きること。 ありがとう、ハシ先。私もこの学校で、かけがえのない先生に出会えたよ。
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