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7
そこは、いつもと同じはずのホームルームだった。
すん、すん、と、前から右から、鼻をすする音が聞こえる。
横の席を見ると、そこにいた生徒はハンカチで顔を押さえてむせび泣いていた。
他の生徒もみんなそうだ。まるで、何かの宗教団体かのように、みんながみんな同じ行動を取っている。みんながみんな泣いている。
一体どうしたというのだろう。
教壇に立つ、四十過ぎの女性教師が、やつれた顔で、俯きがちに口を静かに開いた。
「葬儀は…―――」
ああ、そうだ。
ハシ先は、電車のホームから落ちて、亡くなってしまったのだ。
どうして…―――。
それが事故だったのか、自殺だったのか、そんなことは生徒には教えてもらえなかった。ただ確かに分かる事実は、彼はもう、この世にいないということ。
私の心に、ぽっかりと穴が開いてしまったこと。
『先生だって、大学入るまで教師になろうなんて思ってなかったんだぞ』
どこからかハシ先の声が聞こえたような気がした。
そうだ、先生は、もしかしたら先生になりたくてなった訳じゃなかったのかも知れない。もしかしたら、私たちの知らないうちに、一人で抱えきれないほどのストレスに押しつぶされそうになっていたのかも知れない――そんな悪い考えをしてしまう。
『人生は白いキャンバスなんだ。お前が「こう描きたい」と思えば、どんな人生にだってできるんだ』
先生はもう、キャンバスに絵を描けないんですか?あんなに私に語ってくれた先生自身の未来は、もう続きがないんですか?
先生、今を生きろって言ってくれたじゃないですか。
『未来をどうするかじゃなくて、その時その時にある幸せを探す努力をしよう、な?人生、思い通りに行かなくたって、幸せを探せば幸せになれるんだよ』
言ってくれたじゃ…ないですか……。
ふいに耳に、彼の声が聞こえた。
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